Mリーガー渋川難波プロによる 点数計算教室 を見た。 「符を使わない」という斬新な切り口で興味深いし、たいていのケースはこれで賄えるのだけれど、3900点や7700点が発生する理由が省略されていることが気になった方もいるのではなかろうか。 これは「渋川式」が点数を素早く把握することを目的とした「簡易的」な方法であることが原因で、「正式な」方法を知れば3900や7700の発生理由は理解できるのである。
という訳で、本稿ではまず「正式な」点数計算方法を説明し、その後で如何に簡易に計算するかという順序で点数計算を説明してみたいと思う。
なお、ここで説明した「正式な方法」のプログラム化については以下の書籍で詳しく解説しているので、興味のある方はご覧いただきたい。
点数計算は正式には以下の手順を踏むことになる。
2 に関してはみなさんご存じなので省略し、1 と 3 についてできる限り正確に説明してみる。
符の体系は以下のような表で説明される。
副底 | 20符 |
---|
面子 | 雀頭 | 待ち | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
順子 | 0符 | 数牌 | 0符 | 両面 | 0符 | ||
刻子 | 中張 | 幺九 | 客風 | 双碰 | |||
明刻 | 2符 | 4符 | 自風 | 2符 | 嵌張 | 2符 | |
暗刻 | 4符 | 8符 | 場風 | 辺張 | |||
明槓 | 8符 | 16符 | 三元牌 | 単騎 | |||
暗槓 | 16符 | 32符 | 連風牌 | 2符または4符 |
門前加符 | 10符 | ツモ平和 | 一律20符 |
---|---|---|---|
ツモ符 | 2符 | 七対子 | 一律25符 |
喰い平和 | 一律30符 |
パターンが多く厄介だ。 特に刻子の符がいくつになるのか分からなくなる人も多いだろう。 これをもしプログラム化するのであれば、以下のように整理すればよい。
刻子 の部分が倍々計算(槓子の場合は4倍)で説明できることが分かるだろう。 表を覚えるよりこの方が把握しやすいと思う。
連風牌 については、Mリーグでは2符だが天鳳や雀魂では4符としている。 私自身は「役牌のなり損ね」の雀頭に与える符なのだから、連風牌が2翻(場風+自風)なら符も同様に4符(場風+自風)とするのが合理的だと思っている。
例えば東場の東家が下記の手牌でツモ和了した場合、(連風牌を4符とする天鳳ルールでは)各ブロックは以下のように評価される。
雀頭 | ![]() ![]() | 場風で +2、自風で +2 | 4 符 |
---|---|---|---|
順子 | ![]() ![]() ![]() | 辺張待ちで +2 | 2 符 |
![]() ![]() ![]() | 0 符 | ||
刻子 | ![]() ![]() ![]() | 幺九牌で ×2、暗刻で ×2 | 8 符 |
![]() ![]() ![]() | 幺九牌で ×2 | 4 符 |
ブロックごとの符の総和は 4 + 2 + 0 + 8 + 4 = 18 符。 これに副底 20 符とツモ符 2 符を足して 40 符。 これを10符単位で切り上げるので、40 符と計算される。
和了点は符と翻数から以下で算出する。
で得られた点を 基本点 とするが、これだけでは点数が大きくなりすぎる(いわゆる青天井になる)ので以下で制約する。
「数え役満なし」のルールの場合は、13翻以上でも三倍満として扱う。 「切り上げ満貫あり」のルールの場合は、基本点 1920点を 2000点に切り上げる。
基本点から実際に支払う 負担額 を決定する。
負担額の100点未満は切り上げる。
具体的な例で計算してみよう。
端数の理由がお判りいただけただろう。
正式な計算方法はこの通りなのだが、ゲーム中にこの手順で数秒内に計算するのは難しい。 そこで、簡易な計算方法として和了の形をパターン化し、頻出のパターンについて暗記するという方法をとることになる。
刻子の符を無視すると、役満を除くすべての和了は以下にパターン化できる。 「渋川式」では符を明示的に使用しないが*2、内容としては同じことである。
メンゼン | 七対子 | 25 符 | |
---|---|---|---|
平和 | ツモ | 20 符 | |
ロン | 30 符 | ||
その他 | ツモ | 30 符+α | |
ロン | 40 符+α | ||
鳴き | 30 符+α |
+α がクセモノで、いわゆる「テンパネ」と呼ばれている部分である。 刻子の符の合計が 8符以上の場合、雀頭の符やツモ符、待ちの形の符と併せて10符を超えるテンパネが発生しやすい。幺九牌の暗刻があればそれだけで8符となるのでテンパネしていないか確認が必要になるだろう。
暗記が必要な点数表を以下に示す*3。 本表は「切り上げ満貫なし」の場合であり、「切り上げ満貫あり」の場合は30符4翻、60符3翻を満貫に切り上げる。
子の和了 | 親の和了 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1翻 | 2翻 | 3翻 | 4翻 | 1翻 | 2翻 | 3翻 | 1翻 | |
20符 | (400 / 700) | (700 /1300) | (1300 / 2600) | (700) | (1300) | (2600) | ||
30符 | 1000 (300 / 500) | 2000 (500 / 1000) | 3900 (1000 / 2000) | 7700 (2000 / 3900) | 1500 (500) | 2900 (1000) | 5800 (2000) | 11600 (3900) |
40符 | 1300 (400 / 700) | 2600 (700 / 1300) | 5200 (1300 / 2600) | 満貫 | 2000 (700) | 3900 (1300) | 7700 (2600) | 満貫 |
50符 | 1600 (400 / 800) | 3200 (800 / 1600) | 6400 (1600 / 3200) | 満貫 | 2400 (800) | 4800 (1600) | 9600 (3200) | 満貫 |
60符 | 2000 (500 / 1000) | 3900 (1000 / 2000) | 7700 (2000 / 3900) | 満貫 | 2900 (1000) | 5800 (2000) | 11600 (3900) | 満貫 |
70符 | 2300 (600 / 1200) | 4500 (1200 / 2300) | 満貫 | 3400 (1200) | 6800 (2300) | 満貫 | ||
80符 | 2600 (700 / 1300) | 5200 (1300 / 2600) | 満貫 | 3900 (1300) | 7700 (2600) | 満貫 | ||
90符 | 2900 (800 / 1500) | 5800 (1500 / 2900) | 満貫 | 4400 (1500) | 8700 (2900) | 満貫 | ||
100符 | 3200 (800 / 1600) | 6400 (1600 / 3200) | 満貫 | 4800 (1600) | 9600 (3200) | 満貫 | ||
110符 | 3600 (900 / 1800) | 7100 (1800 / 3600) | 満貫 | 5300 (1800) | 10600 (3600) | 満貫 |
これを見るとウンザリすると思うが、子の30符、40符、50符に出現する10種の点数さえ暗記してしまえば、点数が倍々計算であるという性質から
で応用できる。 また、親の点数は1.5倍なので、
で概ね求めることができる*4。
これで和了の99%以上は計算できるようになったので、余裕があれば70符以上についても暗記すればよいが、覚えている人は稀だろう。