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日本でキャッシュレス生活

4年ほど前に 中国QR決済事情 というブログ記事を書いたことがある。 その当時、日本でキャッシュレスといえば駅のホームの自販機でSuicaを使うくらいな感じだったと思うのだが、コロナ禍明けで3年半ぶりに帰国したので帰国期間中キャッシュレス生活してみた。

私は中国大連では4年前からキャッシュレス生活しており、普段の決済はWeChat Payで事足りる。 公共交通機関を利用するときのみ大連市の交通系ICカードである“明珠卡”を使うのだが、そのチャージにはWeChat Payを使っている。 つまり財布に触れる機会がほぼない訳だ*1。 日本でのキャッシュレス生活の目標も「財布に触らないこと」とする。 現金は当然、クレジットカードもキャッシュカードも使わない生活である。


Apple Pay

という訳で、iPhone歴8年で一度も起動したことがなかったアプリ「ウォレット」を起動する。 ウォレットには複数の物理カード(Suicaやクレジットカード、プリペイドカードなど)を保持できる。 これをiPhoneのNFC通信(FeliCaもこの一種)で決済に使うことをApple Payと呼ぶらしい*2。 私は2枚のクレジットカード(MasterCard と American Express)と1枚の交通系カード(PASMO)をウォレットに入れておくことにした。

クレジットカード

Apple Payでクレジットカードを使う場合、次の2つの異なる方法がある。

iD/QUICPay

日本特有の方法。 日本の誇るFeliCaの技術による「クレジットカードをタッチして使う」方法の先駆け。 iD はカード自体がFeliCaに対応しておりクレジットカードを電子マネーのように「タッチするだけ」で使うことができる。 ウォレットにカードを読み込むと物理カードの代わりにiPhoneをタッチすることで決済を行えるようになる。 QUICPay は物理カードには対応しておらず、ウォレットにカードを読み込み、iPhoneをタッチして使う。 ウォレットに読み込んだときに、iDとなるかQUICPayとなるか(あるいはどちらにもならないか)はカードによって決まっていて変更はできない。 私の2枚のクレジットカードはいずれもQUICPayとして読み込まれた。

タッチ決済

海外でも使える方法*3。 近頃のクレジットカードはカード自体に「タッチして使う」機能が備わっているのだが、ウォレットに読み込んでも同様に使うことができる。 通信方式はFeliCaではなく、Type-A、Type-Bという別規格を使っているので日本ではまだ対応していない加盟店もあるようだ。

交通系カード

交通系カードはプリペイドカードでもあるが、既存のカードをウォレットに入れる場合には残高が引き継がれる。 残高引き継ぎの際にはデポジットとして支払った金額もチャージ額として戻ってくる。 引き継いだ元のカードは無効になるので破棄してしまえばよい。 チャージにはウォレット内のクレジットカードが使えるので現金は不要になる。 オートチャージも可能なようだ。

Apple Payには「エクスプレスカード」という設定があり、これに指定したカードはiPhoneがスリープした状態でも利用可能になる。 交通系カードを使うときにいちいちiPhoneを起こすのも面倒なのでエクスプレスカードに指定しておくのがよいだろう。 ただし認証なしに使えることになるので、オートチャージとの併用は避けた方が安全だ。

中国のカード

ものはついでと中国大連市の交通系ICカードの“明珠卡”を読み込んでみたが、日本のクレジットカードではチャージできない。 中国のデビットカード(银联: UnionPay)を読み込んだところ、こちらではチャージできた。 帰国したらスマホタッチで改札を通ってみる。

QR決済

Apple PayはNFC(FeliCa含む)での決済方法なので、NFCに対応した決済端末がある店舗でしか使えない。 コンビニ、スーパー、ドラッグストアなどでの利用はほぼ問題ないが、個人商店だと決済端末を持たずQR決済のみ対応という場合もある。 中国では「加盟店になる必要がない」決済方法としてQR決済が普及したのだが、日本でも小規模店舗は同様の状態のようだ。

QR決済は専用のアプリが必要になる。 私はPayPayをインストールしてみたが、クレジットカードからのチャージができなくなるとアナウンスがあり、銀行口座からのチャージはネットバンキングの契約が必要とのこと。仕方なしに現金でチャージした。 なので私の場合、QR決済は現段階では「財布を持たない」ための選択肢とはならなかった。

利用結果

タッチ決済をメインにして、それがダメなら他の方法をという使い方で1ヵ月生活してみた。 日本の場合、決済方法が乱立しているのでレジで決済方法を告げる必要があるのがまず面倒である。 タッチ決済を希望する場合は、レジで「クレジットカードで」と告げるのがよさそうだ。 最近のクレジットカード決済端末はカードを擦る方法にも、差す方法にも、タッチする方法にも全て対応しているので、問題なく決済できるケースがほとんどだった。 まれに「カードを差してください」と言われる場合があったが、このような場合は「NFC Payで」と言えばよいようである。 決済端末を操作しているところを覗き見たら、NFC Payというボタンがあった。

ドラッグストアではタッチ決済に対応していないケースがあり、その場合は「QUICPayで」と告げて対応してもらった。 おそらくはFeliCa専用の決済端末なのだろう。 決済端末は、タッチ決済かQUICPayのどちらかが使える場合がほとんどだと思うので、PASMOは駅の自販機などの限定したケースでのみ使うことにした。

どれもダメな場合でもPayPayなら対応している店舗はあったので、PayPayも使えるようにしておいた方がよいかもしれない。 まあでもそれもダメで現金になるケースもかなりある(ラーメンの食券販売機など)ので、PayPayを使うくらいなら現金で、というのが今の日本の実情かもしれない。

中国で財布なしで生活している身からすると、日本のキャッシュレス決済は「まだまだ不便」と言わざるを得ない。 おそらく現金は手放せないので、小銭が発生しないケースではみな現金を使い続けるんだろうなあ、というのが正直な感想でした。

  1. ^ 社食で社員証をプリペイドカードとして使い、そのチャージに現金を使っているので100%キャッシュレスではない
  2. ^ モバイルオーダーなどNFCを使わない方法もあるのでこの言い方は正確ではないのだが……
  3. ^ 中国ではクレジットカード加盟店が少ないので実質使えないが